JBA

JBA

現地レポート

引き継がれる姉の思い RSS

2015年12月27日 14時06分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

最初から最後までお互いがともに意識していた。お姉ちゃんに勝ちたい。最後の大会で妹に負けるわけにはいかない。果たしてその結果は――

「JX-ENEOSウインターカップ2015(以下、ウインターカップ)」女子準決勝、大会4連覇を目指す愛知・桜花学園と、昨年のファイナリスト、千葉・昭和学院の一戦は、桜花学園が64-58で勝ち、決勝戦進出を決めた。

桜花学園の1年生ガード⑭山本 麻衣選手が言う。
「別の高校に進学を決めたときから、1年生でスタメンの座を取って、ライバル校にいるお姉ちゃんと戦いたかった」
ライバル校にいる姉とは昭和学院⑨山本 加奈子選手である。そんな2人が国体に続き、ウインターカップ2015の準決勝でもマッチアップすることになった。

山本 麻衣選手にプレッシャーをかける昭和学院⑨山本 加奈子選手

ディフェンスでプレッシャーをかける昭和学院⑨山本 加奈子選手

姉・加奈子選手は試合後、「絶対に勝とうと思っていました。でも自分がムキになりすぎてしまった……もう少しチームで戦えばよかった」と、涙を浮かべる。
加奈子選手が高校進学とともに千葉に移り住むまで、2人はずっと一緒だった。姉妹としてケンカをすることもあったが、それはどこの家庭の、どの姉妹にもある光景だ。しかし、だからこそわかることがある。
「(麻衣選手は)崩れるときには崩れる。プレッシャーをかけていこう」
加奈子選手はそうしてゲームに臨んだという。

第1ピリオド、桜花学園の最初の攻撃から2人はマッチアップをする。麻衣選手は加奈子選手のディフェンスのプレッシャーを「すごい」と感じていた。しかし桜花学園で1年生のときからスタメンの座に座れる選手は決して多くない。そんな稀有な一人としての責任も、1年生ながらある。
「お姉ちゃんのプレッシャーは強くてシュートが入らなかったけど、だったらファウルをもらうつもりで積極的にドライブをしていこう」
麻衣選手はゲームの中で強気な戦い方に出たという。それが結果としてチームにいい流れを生む。

姉・加奈子選手に挑んだ桜花学園⑭山本 麻衣選手

姉・加奈子選手に挑んだ桜花学園⑭山本 麻衣選手

そしてゲーム最終盤、一旦は2点差まで詰められた桜花学園が、再び6点リードした場面で麻衣選手がバスケットカウントを決める。ファウルをしたのは加奈子選手。しかもそのファウルで加奈子選手はファウルアウトとなる。麻衣選手が言う。
「そこにお姉ちゃんがいたことはわかっていました。でも勝つためにはファウルされても……たとえお姉ちゃんがファウルアウトになっても、決めなきゃって思っていました」
勝利の女神は、冷静に状況を見ながら、姉を超えようとした妹に軍配を上げたわけだ。

歴史学者の網野 善彦氏の言葉に「負けた人間にしかわからないことのほうが、人間にとって大切なことがあるのではないか」というものがある。妹は勝負に勝ったが、姉は負けたことでまたひとつ人間として一回り大きくなれる。

最後に姉・加奈子が妹・麻衣について語ってくれたことが、それを物語る。
「3年生が中心の桜花学園で1年生からスタメンに入って、しかもポイントガードとしてしっかり声を出しているし、思い切りプレイしている。決勝戦も頑張ってほしい」
姉のエールに妹はどう応えるか。託された「優勝への思い」引き継いで、麻衣選手は明日の決勝戦に臨む。

山本 麻衣選手のバスケットうカウントで、山本 加奈子選手(写真左)はファウルアウトに

山本 麻衣選手のバスケットうカウントで、山本 加奈子選手(写真左)はファウルアウトに。勝敗のコントラストは残酷だ

[ 記事URL ]

気づきこそ進化の一歩 RSS

2015年12月26日 18時46分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人生には何度かの転換点(ターニングポイント)がある。それに気づくかどうかで、その人の道は変わっていく。

洛南を破った近畿大学附属ベンチ

洛南を破った近畿大学附属ベンチ

「JX-ENEOSウインターカップ2015(以下、ウインターカップ)」は4日目、男子3回戦。昨日、見事なまでの集中力を見せて、異名の復活かと思われた京都・洛南が敗れた。相手は同じ近畿ブロックの大阪・近畿大学附属。大森 健史コーチが「近畿のチームにとって洛南は大きな壁。初めて勝ちました」という勝利は、同校にメインコートへの扉を開けさせた。

勝利の立役者は197cmのセンター、⑮西野 曜選手だ。26得点・12リバウンド――と、ここまでは、インサイドの選手であればある程度予想できる数字かもしれない。しかし彼はアシストも5つ記録している。アシスト以外でも絶妙と言っていいパスをいくつも繰り出している。大森コーチも「彼はドリブルも上手いし、パスも上手い。そのうえ視野も広いから、彼のところにディフェンスが寄ってくれば他の選手にパスを出せるし、寄ってこなければ1対1ができるんです」と絶賛する。

そのことを西野選手にも尋ねると、「センターは周りを見なければいけないポジションなんだなって自分で思っていて、そこから意識するようになった」と言う。それに気づいたのが中学3年生のときというから、今から2年ほど前の話だ。「パスはディフェンスを動かせるから好きですね」と笑うが、まずはそこが転換点のひとつ。

西野選手はまた、今年度の男子U-18日本代表選手として、韓国で行なわれた「第23回日・韓・中ジュニア交流競技会」に出場している。それが次の転換点である。

ゴール下でも力強いプレイを見せた近畿大学附属⑮西野 曜選手

ゴール下で力強いプレイを見せた近畿大学附属⑮西野 曜選手

「他国の選手が大きすぎて、ゴール下がまったくダメだったんです。そこからフィジカルを鍛えていかなければいけないという意識を持つようになりました。自分でも自覚が芽生えてきたなと思います」

大森コーチもU-18日本代表前後で彼の意識が変わったことを認める。

「もともとムラのある子というか、決してきっちりした性格の子ではなかったんです。でもU-18日本代表のあとから目覚めてくれて……それも今日の勝因のひとつだと思います」

中学でパスに目覚め、高校でフィジカルの重要性に気づき、自主的にトレーニングを励んだ。将来のことはまだわからないと言うが、彼のアンテナはまた何かをキャッチするだろう。もしかすると明日のメインコートに、その何かが待っているかもしれない。

バスケットを始めたのは小学1年生のとき。

「母に『何かやりなさい』と言われて始めました」

それもまた彼の転換点だろう。その一言がなければ、もしかしたらウインターカップ2015における近畿大学附属の洛南戦初勝利はなかったかもしれない。母に1日遅れのクリスマスプレゼントである。

[ 記事URL ]

元日本代表が見た2人の原石 RSS

2015年12月26日 14時46分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説に出てくる探偵、フィリップ・マーロウが言っている――タフじゃなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格はない。
ともに優しさや責任感はあるのだが、プレイヤーとしてのタフさが少し足りない。元女子日本代表は2人の“ダイヤモンドの原石”をそのように見ている。

「JX-ENEOSウインターカップ2015(以下、ウインターカップ)」は4日目。女子準々決勝、愛知・桜花学園vs東京・明星学園(開催地)の対戦は、64-45で桜花学園が勝利し、準決勝進出を決めた。

選手にアドバイスをする明星学園・矢代 直美アシスタントコーチ

選手にアドバイスをする明星学園・矢代 直美アシスタントコーチ

敗れた明星学園のアシスタントコーチは、Wリーグ2010-2011シーズンで廃部となった日本航空JALラビッツで活躍し、日本代表にも名を連ねた矢代 直美さんだ。日本航空のメイン戦術だった「エイトクロス」を取り入れていた同校の椎名 眞一コーチから請われて、3年前から週に1度、指導に関わっていたのだと言う。3年前とはエースの④中田 珠未選手が入学したときである。

「中田はいわゆる、いい子なんです。責任感もあって、キャプテンになってからは練習でできない子がいると、自分の目の前で教えたりするんですね。それくらい優しいんですけど、優しすぎて、自分の足元が見えていないところがあります。プレイヤーとしての自分に何が必要で、ゲームで何をすればいいかを見失うと、今日のように自分らしいプレイがまったく出せなくなるんです」

桜花学園戦の中田選手は31分の出場で6得点。エースとしては物足りない数字である。

シュートを打つ明星学園④中田 珠未選手

シュートを打つ明星学園④中田 珠未選手

「それでも身体能力は抜群ですし、吸収力もすごく早い。だからバスケットのことを何も知らないで入学してきたのに、ここまで成長できたんです。ただトップクラスでプレイしようと思えば勝ち気な態度というか、強さ、タフさがなければダメです。優しいことはすごくいいことですが、荒さというか、ふてぶてしさみたいなものを大学で、さまざまな人と出会って学べれば、将来Wリーグでプレイすることも可能な選手だと思います」

優しさだけでは生き馬の目を抜く勝負の世界では生きていけない。矢代アシスタントコーチ自身、そのことを日本体育大学で出会った人々から学び、さらに日本航空を率いていた林 永甫コーチ(愛知・桜丘 アシスタントコーチ)に磨かれたのだ。自分の歩んできた道に中田選手の行く末を重ねているところもあるのだ。

もう一人の逸材、⑭オコエ 桃仁花選手についても、矢代アシスタントコーチは「まだまだ可能性を持っている選手」だと認める。

「天性の能力というか、センスはピカイチです。今日のゲームでもそうでしたが、最後は自分がやってやるという責任感も強い。まだ2年生なので進路はこれからですが、私の目からすると、結果を求められる実業団向きだと思います」

しかし、まだまだ足りないところも多い。今大会はプロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスにドラフト1位指名された兄・瑠偉さんの影響もあって必要以上に注目が集まったが、バスケットボールプレイヤーとしてはまだまだ発展途上だと言うのだ。

明星学園⑭オコエ 桃仁花選手はまだまだ発展途上

明星学園⑭オコエ 桃仁花選手はまだまだ発展途上

「桃仁花は基本練習を100%の力でやらないところがあるんです。本人はやっているつもりかもしれませんが、周りから見ればやっていません。自分の中で、これはやったほうがいい、これはやらなくてもできるって、勝手に線引きしてしまうのでしょう。でも、だからこそ、地味な基本練習の大事さを自分の中でしっかりと理解して取り組めば、間違いなくもう一皮むけますよ」

桜花学園戦ではチームトップの15得点を挙げているが、フィールドゴールは29本も打っている。成功は3Pシュート1本(試投5本)と、2Pシュートが6本(試投24本)。それでいてオフェンスリバウンドはゼロである。

「シュートを打ったらリバウンドに入るなど、最後まで自分で処理できるようになるためには、やはり地味な基本練習を繰り返すしかないんです」

これもまた自分の姿に重ねるところがあるのだろう。大学時代はスーパースターだった矢代アシスタントコーチが、日本航空では得点を取りながらも、リバウンダーとしての才能も開花させた。当時彼女は「リバウンドは入らなければ取れません」と、言葉にすれば当たり前のことだが、実際には選手たちが疎かにしていることを口にして、体現もしていた。だからこそ日本一にもなれたし、日本代表にも名を連ねることができたのだ。

先ごろ結婚され、今後はご主人とともに北海道に住むことになる。今回のベンチ入りは最初で最後のことだと言う。それでも矢代アシスタントコーチは「週1回ではすべてを見られませんでした。これからは北海道で生活をするので明星学園とどう関わるかは決まっていません。でも、これからも何かしらバスケットに関わり続けたいですね」と言って、続けた。

「やっぱりバスケットはおもしろいですよ」

2人の原石にはアシスタントコーチの思いを受け継いで、バスケットのおもしろさを広めてほしい。中田選手もオコエ選手もそれだけの逸材である。

「これからもバスケットに関わりたい」と矢代アシスタントコーチ

「これからもバスケットに関わりたい」と矢代アシスタントコーチ

[ 記事URL ]