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現地レポート

届かなかった思い RSS

2015年12月28日 17時50分

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決して歩みを止めなかった。歩みを止めなければ可能性はきっと見えてくる。信じた可能性は次の目標になり、その目標自体は達成できなかったが、彼女の道は必ず次の道につながる。

岐阜女子が悲願の初優勝を決めた

岐阜女子が悲願のウインターカップ初優勝を決めた

「JX-ENEOSウインターカップ2015(以下、ウインターカップ)」は女子最終日。女子決勝、愛知・桜花学園と岐阜・岐阜女子の一戦は、54-49で、岐阜女子がウインターカップ初優勝を決めた。前半の12点ビハインドから諦めずに勝ち得た、見事な栄冠である。

その決勝戦の舞台に特別な思いを抱いていた選手がいる。桜花学園⑤脇 梨奈乃選手である。今シーズンを桜花学園のスタメンとしてスタートさせたが、春の「第43回全関西バスケットボール大会」で左膝の前十字靭帯を断裂してしまう。そこから始まった過酷なリハビリの日々。「何で自分がこんなに苦しい思いをしなければならないの?」と折れてしまいそうな気持ちもあったが「それでも勝ちたい……試合に出て、もう一度メインコートで走り回りたい」と、自らを奮い立たせた。

もちろんその間にもチームは進んでいく。彼女の抜けた穴は決勝戦で16得点を挙げた⑧粟津 雪乃選手がカバーした。インサイドには⑩馬瓜 ステファニー選手もいるが、粟津選手ともに2年生。脇選手はプレイできない分、後輩たちに“桜花学園のインサイド”とはどういうものかをずっと伝え続けた。

そしてウインターカップ2015。苦しいリハビリを終えて脇選手が帰ってきた。スタメンの座は粟津選手に譲ったが、それでも彼女が活躍をすることは嬉しく、馬瓜選手を含めたインサイド陣がファウルトラブルに陥れば、すぐに出ていく用意もしていた。

体を張って⑦ディヤイ ファトー選手を守った桜花学園⑤脇 梨奈乃選手

体を張って⑦ディヤイ ファトー選手を守った桜花学園⑤脇 梨奈乃選手

決勝戦でも馬瓜選手が岐阜女子⑦ディヤイ ファトー選手を守り切れずにファウルを重ねると、コートに立った。持ち味のパワーと、桜花学園のファンダメンタルでセネガルからの留学生にベストなポジションを取らせなかった。相手に傾いてもおかしくない流れを、ギリギリのところで止めていたのは脇選手のディフェンスだった。

しかし結果は第4ピリオド、残り2分を切ったところからの逆転負け。涙を流すチームメイトの横で、脇選手は放心状態だった。

「まだ夢を見ているみたいです。言葉にできません……本当に『言葉が出ない』という言葉しかありません」

それでもケガを克服して、決勝戦のコートに戻ってこられたことは前向きの捉えていい。

柔道の山下 泰裕氏がこう言っている――先輩からだけではなく、後輩や子どもからだって学べることはある。教わることが何もないと思った瞬間から、その人の人間としての進歩は止まってしまう。

⑩馬瓜 ステファニー選手は脇選手の思いを引き継げるか

⑩馬瓜 ステファニー選手は脇選手の思いを引き継げるか

脇選手もケガの期間に後輩たちへアドバイスをしながら、さまざまなことを学んだ。

「馬瓜にも粟津にもそれぞれ特技があります。それは自分の持ち味とは違うもので、見ていて勉強になります。それは頑張れば自分でもできることでもあるし、次のステージでも活用できると思うんです。彼女たちから学んだことをやっていきたいと思います」

これは間違いなく彼女の“人として”の進歩につながる。

桜花学園の全国大会通算60勝も、高校9冠も、目の前で、その手からすべり落ちた。目標は達成できなかったが、この悔しさは自らが教え、教わった後輩たちが引き継いでくれるはずだ。この敗戦から桜花学園も、そして脇選手もさらに強くなる。

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跳べ、ビッグマン! RSS

2015年12月27日 21時35分

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パラリンピックを創案したルートヴィヒ・グッドマン博士は「失った機能を数えるな。残った機能を最大限に生かせ」と言ったが、チーム作りも同じことが言える。いない人材をあれこれ考えても意味がない。いるメンバーのなかで最大限の力を出せば、おのずと勝機は見えてくる。

「JX-ENEOSウインターカップ2015(以下、ウインターカップ2015)」は5日目。男子準々決勝、国体優勝の中心メンバーがそろう茨城・土浦日本大学と、高校総体準優勝の愛知・桜丘の一戦は92-77で土浦日本大学が勝利し、準決勝へのチケットを手に入れた。

24得点・15リバウンドを挙げた土浦日本大学⑤平岩 玄選手

24得点・15リバウンドを挙げた土浦日本大学⑤平岩 玄選手

勝因のひとつは土浦日本大学の圧倒的な攻撃力が挙げられる。⑧杉本 天昇選手が3Pシュート6本を含む28得点、⑩松脇 圭志選手も3Pシュート5本を含む25得点を挙げている。ただ、もし彼ら2人がアウトサイドから決めていただけなら、桜丘も打つ手があったはずだ。その一手が出せなかったのは、土浦日本大学のセンター⑤平岩 玄選手の存在が大きい。平岩選手も合わせなどで24得点を挙げている。

平岩選手がゲームを振り返る。

「アウトサイド陣が当たっていた分、僕が合わせでインサイドの得点を挙げられたことは、相手にダメージを与えられたと思います」

平岩選手はまた15本のリバウンドも記録している。203cmの桜丘⑩モッチ ラミーン選手に対して、平岩選手も199cm。高さで引けを取ることはない。負けることの多かったフィジカルコンタクトも、トレーニングを積んで少しずつだが克服してきた。自分のなかに今ある力を出し切っての勝利である。

平岩選手は和歌山国体でも決勝戦で明成⑧八村 塁選手を擁する宮城を破って優勝している。八村選手は昨年度の男子U-17日本代表チームでも一緒に戦っている、いわばライバルだ。それが自信になったのかと問えば、

「佐藤(豊)コーチからすぐに『調子に乗るな』と言われたので、それほどでもありません。ただ塁を相手に22リバウンドを取ったことは評価してくれました。それが自信になりました」

佐藤コーチの厳しい声を思い出したのか、苦笑しながらそう答える。

リバウンドでも留学生に引けをとらなかった

リバウンドでも留学生に引けをとらなかった

では、佐藤コーチは平岩選手をどう見ているのか。

「素直に努力をする子ですからね。今ではゴール下のシュートはほとんど落とさないし、今日もそうだったけど、リバウンドをよく取ってくれるようになりました」

インサイドで得点やリバウンドを計算できるようになれば、コーチとしてもチームを作りやすくなるものだ。褒める言葉の数は多くないが、佐藤コーチが平岩選手を自チームのセンターとして信頼していることがわかる。

準決勝の相手は秋田・県立能代工業。古豪同士の伝統の一戦だが、選手たちは平成生まれの若者たち。そう言われてもピンと来ないかもしれない。それでも周りは注目してしまう。ある企業のテレビCMで“伝統を過去のものにしない”というコピーがあったが、彼らの戦いぶりが新たな伝統として記憶されていくのだ。

県立能代工業にも⑥中村 碧杜選手という197cmのセンターがいる。彼もまた、新潟・帝京長岡⑦ディアベイト タヒロウ選手を上回って、準決勝のコートに立つ。

伝統の一戦として感傷に浸りながら見るもよし、未来を担うビッグマンのマッチアップを、将来を予想しながら見るもよし。どちらにせよ、豊かな可能性を秘めたゲームを楽しみたい。

土浦日本大学の準決勝の相手、県立能代工業は勢いのあるチーム

土浦日本大学の準決勝の相手、県立能代工業は勢いのあるチーム

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俺たちの誇り RSS

2015年12月27日 16時59分

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敗れてなお清々しい表情を浮かべるのは、自分たちのバスケットをやりきったからだろう。

「JX-ENEOSウインターカップ2015(以下、ウインターカップ)」は5日目、男子準々決勝。大会3連覇を目指す宮城・明成が東京・八王子学園八王子を85-72で下し、準決勝進出を決めた。

前半を終えた時点で46-27と、明成が19点リード。貫禄さえ漂う王者が、このまま一気に勝利をつかむかと思われた第3ピリオド、八王子学園八王子が④新屋 広晃選手、⑧多田 武史選手の3Pシュートなどで一気に得点差を詰める。キャプテンの新屋選手は今年のチームの強みを「流れが来ると一気に乗れる力」と言うが、その言葉どおりの爆発力で明成を追い詰めたのだ。

最後まで攻め続けた八王子学園八王子④新屋 広晃選手

最後まで攻め続けた八王子学園八王子④新屋 広晃選手

しかし勢いは同時に不安も生む。

「行けると思う気持ちと、まだ第3ピリオドが終わったところだし、明成が息を吹き返してくるのではという怖さの半々でした」

新屋選手は、できれば第4ピリオドの終盤で追い上げられたらとも言うが、それが「たられば」であることもよくわかっている。むしろ第3ピリオドで追いついていなければ、第4ピリオドの序盤でリードを奪うこともできなかったし、その後の接戦も難しかったかもしれない。一度火の着いた八王子学園八王子の勢いは、ちょっとやそっとの消火活動では、たとえ自チームの人間であっても止めることはできないのだ。むろん誰一人として火の勢いを落ち着かせようとは考えていなかったし、むしろベンチもスタンド席も懸命に油を注いでいた。新屋選手が笑顔で認める。

「ベンチも流れが来たら盛り上がってくれるので、自分たちもイケイケになれます」

八王子学園八王子と明成は全国大会以外でも、今シーズンは2度対戦している。しかし共にどちらかの主力が欠けており、フルメンバーで戦ったのは今大会が初めてだ。

「やっぱり明成はフリーのシュートを確実に決めてくるし、簡単なミスが少ない。バスケット自体も簡単にプレイします。自分たちが手一杯な感じでバスケットをやっているのに対して、彼らには余裕を感じます」

盛り上がる八王子学園八王子ベンチ

盛り上がる八王子学園八王子ベンチ

それでもやはり手応えのほうが大きかった。悔しい思いもあるが、王者・明成をあと一歩まで追い詰め、ベンチを、スタンド席を、そして会場全体の雰囲気を変えた自負もある。
石川 啄木は「一生に二度と帰ってこない、いのちの一秒だ。おれはその一秒がいとおしい。ただ逃してやりたくない」と言ったが、彼らもまた一秒一秒を、最後の最後まで――新屋選手に至っては残り12秒で両足に痙攣を起こしながらも「最後までコートに立っていたかった」と、戦い続けた。

♪俺たちの誇り、八王子学園。何も怖れずに、共に戦おう!

スタンド席の応援団が歌う応援歌が心に響くゲームだった。

スタンド応援団の声、歌もコートの選手たちに届いたはずだ

スタンド応援団の声、歌もコートの選手たちに届いたはずだ

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