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現地レポート

5人目の男を忘れない RSS

2015年12月29日 19時03分

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シューターとしては3Pシュートの成功が1本というのは不本意だろう。しかしその1本を大事な場面で決めた精神力は、シューターのそれである。

「JX-ENEOSウインターカップ2015(以下、ウインターカップ)」は最終日。男子決勝。宮城・明成と茨城・土浦日本大学による頂点をかけた対戦は78-73で明成が勝利し、3連連続4回目の優勝を遂げた。第3ピリオドまで土浦日本大学を追う展開だったが、第4ピリオドの序盤に逆転すると、再逆転を狙う相手を振り切って、歓喜の瞬間を迎えた。

シュートを放つ明成⑦富樫 洋介選手

シュートを放つ明成⑦富樫 洋介選手

同点と逆転のシュートを決めた⑥納見 悠仁選手、厳しいマークをかいくぐってアウトサイドからシュートを決めた⑩三上 侑希選手、身長で優位に立とうとする相手に対してリバウンドで対等に戦った⑨足立 翔選手、そしてチームトップの34得点を挙げたエースの⑧八村 塁選手。明成はこの4人が注目を浴びがちだが、バスケットは4人で戦うスポーツではない。もしその4人の力がすなわち明成の力であるのなら、どこかで負けていたはずだ。3連覇の陰に最後の1人、つまり明成5人目の選手――⑦富樫 洋介選手の存在を決して忘れてはならない。

佐藤 久夫コーチは彼のシュート力を買ってスタメンに起用したという。しかしそのシュートが、今日の決勝ではなかなか決まらない。3Pシュートを8本打って1本しか決まっていないのだ。しかしその1本がこのゲームの決勝点となった。佐藤コーチも「やっぱり富樫だな」と溜飲を下げたあの場面を、富樫選手はこう振り返る。

「追い上げムードだったし、気持ちで決めました。それまでシュートがまったく決まらなくて、チームメイトに助けてもらってばかりだったのですが、あれで少しは返せたかなとホッとしています」

佐藤コーチからも「強気でシュートを打て」と声をかけられ、また自分を信じてくれているチームメイトのためにもシュートを打ち続けた。それが、たった1本だったけれども、実を結んだわけだ。同じシューターとして対角に立つ三上選手が言う。

「シューターにとってシュートが入らないことは本当に苦しいものです。それでも1本を決めることでチーム全体も、富樫自身も生き返ることができると思っていたので、富樫が決めたときは自分が決めたように嬉しかった」

昨年の決勝戦で、同じようになかなかシュートが決まらず苦しんだ三上選手だからこそ、富樫選手が決めたとき、一番に駆けよって、背中を叩いている。

富樫選手が3Pシュートを直後。チームメイトも喜びを表す

3Pシュートを決めて、ガッツポーズの富樫選手。チームメイトも喜びを表す

そしてもうひとつ、富樫選手が強気に打ち続けた理由がある。昨年までは明成のスタメンだったが、体調不良のためにその座を降りざる得なくなった④増子 優騎選手の存在だ。彼は高校の同級生であると同時に、新潟・新発田市立本丸中学校の同級生でもある。

「増子の分までという思いはありました。彼はディフェンスがうまいのですが、僕にはそれがない。(スタメンを入れ替わった選手として)僕は得点力でそこを補えればと思っていたんです」

第4ピリオド残り2分50秒、明成の72点目となる3Pシュートは、増子選手の思いも乗せたシュートだったのだ。

明成のウインターカップ3連覇を語るとき、富樫洋介選手というシューターがいたことも記憶しておかなければならにない。

3年連続4回目の優勝を決めた宮城・明成

3年連続4回目の優勝を決めた宮城・明成

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