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現地レポート

元日本代表が見た2人の原石 RSS

2015年12月26日 14時46分

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レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説に出てくる探偵、フィリップ・マーロウが言っている――タフじゃなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格はない。
ともに優しさや責任感はあるのだが、プレイヤーとしてのタフさが少し足りない。元女子日本代表は2人の“ダイヤモンドの原石”をそのように見ている。

「JX-ENEOSウインターカップ2015(以下、ウインターカップ)」は4日目。女子準々決勝、愛知・桜花学園vs東京・明星学園(開催地)の対戦は、64-45で桜花学園が勝利し、準決勝進出を決めた。

選手にアドバイスをする明星学園・矢代 直美アシスタントコーチ

選手にアドバイスをする明星学園・矢代 直美アシスタントコーチ

敗れた明星学園のアシスタントコーチは、Wリーグ2010-2011シーズンで廃部となった日本航空JALラビッツで活躍し、日本代表にも名を連ねた矢代 直美さんだ。日本航空のメイン戦術だった「エイトクロス」を取り入れていた同校の椎名 眞一コーチから請われて、3年前から週に1度、指導に関わっていたのだと言う。3年前とはエースの④中田 珠未選手が入学したときである。

「中田はいわゆる、いい子なんです。責任感もあって、キャプテンになってからは練習でできない子がいると、自分の目の前で教えたりするんですね。それくらい優しいんですけど、優しすぎて、自分の足元が見えていないところがあります。プレイヤーとしての自分に何が必要で、ゲームで何をすればいいかを見失うと、今日のように自分らしいプレイがまったく出せなくなるんです」

桜花学園戦の中田選手は31分の出場で6得点。エースとしては物足りない数字である。

シュートを打つ明星学園④中田 珠未選手

シュートを打つ明星学園④中田 珠未選手

「それでも身体能力は抜群ですし、吸収力もすごく早い。だからバスケットのことを何も知らないで入学してきたのに、ここまで成長できたんです。ただトップクラスでプレイしようと思えば勝ち気な態度というか、強さ、タフさがなければダメです。優しいことはすごくいいことですが、荒さというか、ふてぶてしさみたいなものを大学で、さまざまな人と出会って学べれば、将来Wリーグでプレイすることも可能な選手だと思います」

優しさだけでは生き馬の目を抜く勝負の世界では生きていけない。矢代アシスタントコーチ自身、そのことを日本体育大学で出会った人々から学び、さらに日本航空を率いていた林 永甫コーチ(愛知・桜丘 アシスタントコーチ)に磨かれたのだ。自分の歩んできた道に中田選手の行く末を重ねているところもあるのだ。

もう一人の逸材、⑭オコエ 桃仁花選手についても、矢代アシスタントコーチは「まだまだ可能性を持っている選手」だと認める。

「天性の能力というか、センスはピカイチです。今日のゲームでもそうでしたが、最後は自分がやってやるという責任感も強い。まだ2年生なので進路はこれからですが、私の目からすると、結果を求められる実業団向きだと思います」

しかし、まだまだ足りないところも多い。今大会はプロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスにドラフト1位指名された兄・瑠偉さんの影響もあって必要以上に注目が集まったが、バスケットボールプレイヤーとしてはまだまだ発展途上だと言うのだ。

明星学園⑭オコエ 桃仁花選手はまだまだ発展途上

明星学園⑭オコエ 桃仁花選手はまだまだ発展途上

「桃仁花は基本練習を100%の力でやらないところがあるんです。本人はやっているつもりかもしれませんが、周りから見ればやっていません。自分の中で、これはやったほうがいい、これはやらなくてもできるって、勝手に線引きしてしまうのでしょう。でも、だからこそ、地味な基本練習の大事さを自分の中でしっかりと理解して取り組めば、間違いなくもう一皮むけますよ」

桜花学園戦ではチームトップの15得点を挙げているが、フィールドゴールは29本も打っている。成功は3Pシュート1本(試投5本)と、2Pシュートが6本(試投24本)。それでいてオフェンスリバウンドはゼロである。

「シュートを打ったらリバウンドに入るなど、最後まで自分で処理できるようになるためには、やはり地味な基本練習を繰り返すしかないんです」

これもまた自分の姿に重ねるところがあるのだろう。大学時代はスーパースターだった矢代アシスタントコーチが、日本航空では得点を取りながらも、リバウンダーとしての才能も開花させた。当時彼女は「リバウンドは入らなければ取れません」と、言葉にすれば当たり前のことだが、実際には選手たちが疎かにしていることを口にして、体現もしていた。だからこそ日本一にもなれたし、日本代表にも名を連ねることができたのだ。

先ごろ結婚され、今後はご主人とともに北海道に住むことになる。今回のベンチ入りは最初で最後のことだと言う。それでも矢代アシスタントコーチは「週1回ではすべてを見られませんでした。これからは北海道で生活をするので明星学園とどう関わるかは決まっていません。でも、これからも何かしらバスケットに関わり続けたいですね」と言って、続けた。

「やっぱりバスケットはおもしろいですよ」

2人の原石にはアシスタントコーチの思いを受け継いで、バスケットのおもしろさを広めてほしい。中田選手もオコエ選手もそれだけの逸材である。

「これからもバスケットに関わりたい」と矢代アシスタントコーチ

「これからもバスケットに関わりたい」と矢代アシスタントコーチ

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