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現地レポート

JX-ENEOSウインターカップ2015 総括レポート ~笑うために、流せ!~ RSS

2015年12月30日 22時29分

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「東日本大震災復興支援 JX-ENEOSウインターカップ2015 平成27年度 第46回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会(以下、ウインターカップ)」が幕を下ろした。

宮城・明成を大会3連覇に導いた⑧八村 塁選手

宮城・明成を大会3連覇に導いた⑧八村 塁選手

大会最終日、39大会ぶりの優勝を目指した男子の茨城・土浦日本大学は宮城・明成の前に屈した。その明成は、男子では秋田・県立能代工業と京都・洛南しか成し遂げていなかった大会3連覇を達成。彼らの、佐藤 久夫コーチが求める厳しい練習に取り組んできた自信は、決勝戦のコート上で王者の“風格”さえ漂わせていた。むろんそこに至るまでは楽な試合ばかりでなかった。決勝の土浦日本大学戦は言うに及ばず、準々決勝の八王子学園八王子戦でも第3ピリオドに追いつかれるなど、粘られた。それでも最後に結果を出せたのは、彼らの修正力、対応力の速さとその正確さだった。40分間、刻一刻と変わっていく状況の中で、佐藤コーチの指示にすばやく反応し、それを的確に実践できる力。それもまた彼らが3年のあいだに培ってきた、自信なのだろう。技術や体力だけでなく、そんなところにも明成の強さはあった。

岐阜・岐阜女子は全員が最後まで諦めず、悲願の初優勝を飾った

岐阜・岐阜女子は全員が最後まで諦めず、悲願の初優勝を飾った

その男子決勝の前日に行われた女子決勝戦。「高校9冠」、「ウインターカップ最多優勝(21回)」、「全国大会通算60冠」を目指した愛知・桜花学園は、今年度の高校総体、国体で僅差ながらも勝ってきた岐阜・岐阜女子に敗れた。その岐阜女子はウインターカップ初制覇。決して派手なチームではない。アンダーカテゴリーの日本代表選手に選出された選手もいない。しかし、彼女たちは真面目に、一生懸命に努力を重ねてきた。その自信は最後まで揺るがなかった。それが決勝戦の残り2分を切ったところで逆転し、一度は追いつかれながらも、もう一度突き放すことができた要因だったのだろう。高校総体、国体で敗れた相手を上回ることだけを考えて、ウインターカップに臨んだ彼女たちからは、最後まで凄みの漂う気迫が消えなかった。

もちろん桜花学園をはじめ、敗れたチームも真面目に、一生懸命に練習を重ねてきたはずだ。それはゲームの端々から伝わってきた。しかし一生懸命やっても負けることがあるのがスポーツである。それを学べたことはきっと人生の財産になる。その財産はきっと次の舞台で――スポーツに限らず、さまざまなシーンで“勝利”を生むはずだ。

厳しい状況でもベンチから笑顔を送る選手たち(写真:秋田・県立能代工業)

厳しい状況でもベンチから笑顔を送る選手たち(写真:秋田・県立能代工業)

それに付随して、今大会で強く感じたこと。それは“笑顔”が多かったことだ。もちろん敗れれば悔し涙や、そのチームでのバスケットを終える寂しさ、悲しさで涙を流す選手たちも数多くいた。しかし、それでもさっぱりとした、さわやかな笑顔も同じくらい多くあった。そこには勝敗だけでない、自分たちのバスケットを、ウインターカップ2015の舞台で思いきりプレイできる喜びがあったのだろう。都道府県予選で道を閉ざされた仲間たちの分まで、彼ら、彼女らは自分たちのバスケットを楽しんでいたのだ。

誰かが言っていた。「楽しむというのは『楽をする』こととは違う。一生懸命プレイして、結果を――それが勝ちであれ、負けであれ――出すことを楽しむのだ」と。笑顔の源を辿っていけば、そこにはやはり“一生懸命”がある。

全国の登録校数8,107校のうち、ウインターカップの舞台に立てるのはたったの100校だけ。彼ら、彼女らは敗れた8,007校の選手たちと同じか、それ以上に汗を流し、涙を流してきた。
高校生プレイヤーたちよ、一生懸命に汗を流せ。涙を流せ。それは必ず笑顔に変わる。
ウインターカップは来年もキミたちの笑顔を待っている――。

ウインターカップ2015は高校生たちの笑顔であふれていた

ウインターカップ2015は高校生たちの笑顔であふれていた

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5人目の男を忘れない RSS

2015年12月29日 19時03分

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シューターとしては3Pシュートの成功が1本というのは不本意だろう。しかしその1本を大事な場面で決めた精神力は、シューターのそれである。

「JX-ENEOSウインターカップ2015(以下、ウインターカップ)」は最終日。男子決勝。宮城・明成と茨城・土浦日本大学による頂点をかけた対戦は78-73で明成が勝利し、3連連続4回目の優勝を遂げた。第3ピリオドまで土浦日本大学を追う展開だったが、第4ピリオドの序盤に逆転すると、再逆転を狙う相手を振り切って、歓喜の瞬間を迎えた。

シュートを放つ明成⑦富樫 洋介選手

シュートを放つ明成⑦富樫 洋介選手

同点と逆転のシュートを決めた⑥納見 悠仁選手、厳しいマークをかいくぐってアウトサイドからシュートを決めた⑩三上 侑希選手、身長で優位に立とうとする相手に対してリバウンドで対等に戦った⑨足立 翔選手、そしてチームトップの34得点を挙げたエースの⑧八村 塁選手。明成はこの4人が注目を浴びがちだが、バスケットは4人で戦うスポーツではない。もしその4人の力がすなわち明成の力であるのなら、どこかで負けていたはずだ。3連覇の陰に最後の1人、つまり明成5人目の選手――⑦富樫 洋介選手の存在を決して忘れてはならない。

佐藤 久夫コーチは彼のシュート力を買ってスタメンに起用したという。しかしそのシュートが、今日の決勝ではなかなか決まらない。3Pシュートを8本打って1本しか決まっていないのだ。しかしその1本がこのゲームの決勝点となった。佐藤コーチも「やっぱり富樫だな」と溜飲を下げたあの場面を、富樫選手はこう振り返る。

「追い上げムードだったし、気持ちで決めました。それまでシュートがまったく決まらなくて、チームメイトに助けてもらってばかりだったのですが、あれで少しは返せたかなとホッとしています」

佐藤コーチからも「強気でシュートを打て」と声をかけられ、また自分を信じてくれているチームメイトのためにもシュートを打ち続けた。それが、たった1本だったけれども、実を結んだわけだ。同じシューターとして対角に立つ三上選手が言う。

「シューターにとってシュートが入らないことは本当に苦しいものです。それでも1本を決めることでチーム全体も、富樫自身も生き返ることができると思っていたので、富樫が決めたときは自分が決めたように嬉しかった」

昨年の決勝戦で、同じようになかなかシュートが決まらず苦しんだ三上選手だからこそ、富樫選手が決めたとき、一番に駆けよって、背中を叩いている。

富樫選手が3Pシュートを直後。チームメイトも喜びを表す

3Pシュートを決めて、ガッツポーズの富樫選手。チームメイトも喜びを表す

そしてもうひとつ、富樫選手が強気に打ち続けた理由がある。昨年までは明成のスタメンだったが、体調不良のためにその座を降りざる得なくなった④増子 優騎選手の存在だ。彼は高校の同級生であると同時に、新潟・新発田市立本丸中学校の同級生でもある。

「増子の分までという思いはありました。彼はディフェンスがうまいのですが、僕にはそれがない。(スタメンを入れ替わった選手として)僕は得点力でそこを補えればと思っていたんです」

第4ピリオド残り2分50秒、明成の72点目となる3Pシュートは、増子選手の思いも乗せたシュートだったのだ。

明成のウインターカップ3連覇を語るとき、富樫洋介選手というシューターがいたことも記憶しておかなければならにない。

3年連続4回目の優勝を決めた宮城・明成

3年連続4回目の優勝を決めた宮城・明成

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行け、勇んで。小さき者よ RSS

2015年12月28日 22時24分

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バスケットのゴールは3m5cmの高さにある。ゆえにバスケットは「背の大きい選手が有利だ」と言われる。それはある意味で間違いない。しかし、だからといって背の小さい選手が活躍できないスポーツのかといえば、それは違う。小さくても活躍できる。小さい選手には小さいなりのプレイがある。

チームを引っ張る中部大学第一④遠藤 和希選手

チームを引っ張る中部大学第一④遠藤 和希選手

「JX-ENEOSウインターカップ2015(以下、ウインターカップ)」は6日目。男子準決勝、宮城・明成に70-110で敗れた愛知・中部大学第一のキャプテン④遠藤 和希は身長が165cm。明成のスタメンが全員180cmを超えていることを考えれば、間違いなく彼は背の小さい部類に入る。それでもチームの司令塔として攻撃のタクトを振るい続け、コート全体を駆けまわった。

「テレビなどで自分のプレイを見てくれている人たちに、小さくてもできることを見せられればと思っています。『心技体』という言葉も最初に『心』がきますよね。やはり心がなければ技も体もないと思っていますから」

もちろん彼はバスケットスキルも、フィジカルも全国レベルのものを持っている。しかしそれらを伸ばし、保ち続けるためには常に高いレベルの心を維持しなければいけない。簡単なことではない。人はえてして困難な道を避けたがるからだ。学校生活も気楽に過ごせれば、どれだけいいか。しかしそれでは勝負の世界に入ったとき、結果を出すことはできない。

今年度の中部大学第一を振り返って遠藤選手は「学校生活が決してよくはなかったんです」と言う。しかしそれを直すことがプレイにも通じると常田 健コーチに諭され、まずはそこから見直した。それが2回戦で福岡・福岡大学附属大濠を倒し、初のメインコートに立つなど成果として実ったわけだ。

「明成は気持ちも面も含めて基本的なところがしっかりしていました。そこが点差を離された原因だと思います」

背が小さくてもアタックすることで攻撃の目が広がる

背が小さくてもアタックすることで攻撃の目が広がる

遠藤選手は完敗を認める。しかし大会を通じて、1試合ごとに自分たちの成長も実感できている。学年の上下なく、お互いが自分のやりたいことや考えていることを伝え、「でも言うだけじゃなく、相手の言うことを聞くことも心がけている」ことで、チーム内の共通認識は高まり、組織としてのレベルアップにもつながったのだ。

決勝進出の道は途絶えたが、遠藤選手の、中部大学第一のウインターカップ2015は終わっていない。

「常田コーチからはいつも『試合当日までうまくなれ』と言われています。この負けをしっかり受け止めて、それでも今日通用したところは明日も継続し、今日ダメだったところは明日までにしっかり修正して臨みたいです」

今日の完敗とコーチの言葉を素直に受け止め、遠藤選手は明日もまた成長を誓う。背は小さくても、研ぎ澄ましてきた心の大きさだけは最後まで負けたくない。

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